筆者がいざ精神障害者となってみると、世の中の様々な理不尽に遭遇します。筆者が一番驚いたのは、公共交通施設の利用料金です。
東京都の場合、障がい者手帳を取得すると、どの障害でも都営線や都営バスが無料になります。しかし他の私鉄やJRは、基本的に精神障がい者への運賃割引は実施していません。身体障がい者や知的障がい者は半額になるにも関わらず、です!
精神障害のある方々は、長期間の定期通院が欠かせないため、交通費は経済面で負担になります。
このコーナーでは、筆者がこの問題に取り組んできた活動記録を備忘録的にご紹介します。
そこで、この料金体系を変えて貰えないかと各鉄道会社に質問状を送ってみました。その結果の返信がこちら。ついでにホームドアの設置やヘルプマークの啓蒙についてもお願いしてみました。
❝精神障がい者の運賃制度についてご要望を賜り誠にありがとうございます。
精神障がい者は、身体障がい者および知的障がい者のような介護者が常時必要な身体状態ではないため、精神障がい者の単独利用を割引対象にいたしますと、健常のお客様の運賃負担が増大してしまいます。これを補うための公的機関においても、精神障がい者を割引枠への検討をおこなうまでに至っていないのが実情でございます。
この度の精神障がい者割引に関するご要望は、ご利用のお客様からの切なるお声として承り、今後の運営の参考にさせていただきます。
ヘルプマークにつきましては、他のマナー啓発施策と同様に、鉄道各社共通で実施することが分かりやすさの点で重要であると考えております。
そのため、本マークを所管する東京都には、厚生労働省等の後援を得ること等で、東京都以外でも通用する公のマークとしていただくようお願いしております。❞
❝このたび、頂戴いたしました、精神障害者保健福祉手帳をお持ちのお客様への運賃割引制度でございますが、首都圏の大手鉄道会社同様、現在のところお取扱いは致しておりません。この仕組みは、お客様に対する割引運賃から生じる減収分を、所定運賃をお支払いいただいているお客様の負担によって賄う形となっております。
こうした、割引に伴う減収負担のあり方については、国や地方自治体での福祉政策面からも考慮されるべき問題ではないかと考えており、公的助成措置等を含め、鉄道事業者全体として見直し、検討が必須であると認識しております。
したがいまして、このたびのご要望については、ご事情は拝察いたしますものの、現在の状況下ではお応えすることが困難であると考えております。何卒ご理解いただけますようお願いいたします。
また、各駅のホームドア設置につきましては、お客様が安全にご利用いただくことができますよう、弊社では2020年度末までに新たに8駅、2021年以降23駅にホームドアの整備を行ってまいります。
詳しくは、(略)URLを参照いただければ幸いです。❞
(JRは、文章ではなく電話でやりとりをしました。全文は掲載しないでほしいとのことで、趣旨だけ掲載します。)
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Q1. 何故、知的障害者と身体障害者には運賃割引制度があるのに、精神障害者には割引がないのか。
A1.身体障害者と知的障害者に対する運賃割引は、旧国鉄時代に国の政策で行われていたものが引き継がれているだけで、精神障害者には当時そのような政策が無かったため、現在も割引は行われていない。今後も、健常者の方の負担などを考慮しても、仮に国から助成金が来たとしても、精神障害者に対する運賃に限らず、新しく運賃制度を変えていく意思は、会社として現状ありません。
Q2.ヘルプマークを、せめて東京都内だけを走る列車だけでもいいので、優先席に掲示して欲しい。ヘルプマークは、精神障害だけでなく、妊娠やリウマチなどの他の様々な内部障害を抱える患者さんが身につけており、JRさんが率先して取り組み、他の私鉄にも促すことが大切なのではないか。
A2.ヘルプマークに関しては認識しており、今後積極的に啓蒙活動に参画する予定です。
障害者手帳を持っていても、割引にならないのは鉄道だけではありませんでした。私は今、車で片道100kmの通院をしており、経済的なダメージが大きい状況なのですが、高速道路も身体障害と知的障害だけは割引になって、精神は適応が無いのです。この点も問い合わせてみました。
❝メールを拝見いたしました。
いつも高速道路をご利用くださいまして、ありがとうございます。
お申し出の件ですが、
有料道路における障害者割引の対象を、精神障がいをお持ちの方に
拡大することにつきましては、障がい者の方々の社会進出を支援すべきという
世論があることから、重要な問題であると認識しております。
しかしながら、障害者割引による割引相当額につきましては、
国や地方自治体からの助成はなく、他のお客さまからいただく料金収入が
財源となっていることから、広く理解を得られる必要があり、
また、会社の経営に影響を及ぼす可能性もあることから、
慎重に判断をしなくてはならない問題です。
当該割引制度は、全国の有料道路事業者で共通の制度として導入しているため、
当社の判断だけで対象者の拡大といった改正をすることはできません。
精神障がいをお持ちの方への対応につきましては、
他のお客さまとの均衡を図る観点から、他の公共交通機関における
割引の実態などを踏まえつつ、有料道路事業者の間で
考えていくものと認識しております。
当社といたしましては、障がいをお持ちの方も含め、
すべてのお客さまが不自由なく、快適に利用できる高速道路を目指すことで、
微力ながらも福祉の増進に努めてまいります。
この度は、貴重なご意見をお寄せくださいましてありがとうございました。
NEXCO東日本では、これからもお客さまに安全、快適に高速道路を
ご利用いただけるよう努めてまいります。
今後とも引き続きご愛顧のほどお願い申し上げます。❞
これらのお返事を拝読していると、JR以外については要は国から助成金があれば料金改定して頂けるのかな?と思い、選挙があるたびに街頭演説する立候補者さんに声をかけてみたり、各政党にメールをしてみましたが、手ごたえなし(れいわ新鮮組ですら!)。国会議員はあてにならんということで、お役所をあたってみることにしました。
「それは国土交通省に電話してください。」
まずは国土交通省の電話交換手を介して、鉄道課へ。これまでと同様の質問をしたところ、ちっとも返事の声が聞こえず「今、担当者がいないので・・・答えられないんですけど・・・」「いつごろ戻られるんですか?」「わからないです・・・もう遅いので・・・来週電話しなおしてください・・・」orzorz
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仕方ないので、専用の問い合わせフォームから質問を送付したところ、鉄道課から驚きの返信が返ってきました。(そして失望することに、高速道路の管轄からはお返事が返って来なかった!)
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鉄道局 鉄道サービス政策室 の回答をお送りいたします。
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日頃より国土交通行政にご協力賜り感謝申し上げます。
ご意見につきまして、ご回答いたします。
障害者に対する運賃割引については、割引による減収を他の利用者の負担によって賄うという事業者の自主的な判断の中で、理解と協力を求めてきたところです。
精神障害者割引についても、機会を捉えて、理解と協力を求めてきたところです。こうした取組の結果、精神障害者割引を実施している鉄軌道事業者は、平成18年4月では42者であったのに対し、平成30年4月現在では83者となり、精神障害者割引を実施している事業者は増加傾向にあります。
国土交通省と致しましては、精神障害者割引の導入が広がっている状況につきまして、JRをはじめとする各鉄軌道事業者に幅広く周知するなど、引き続き、精神障害者割引についての理解と協力を求めて参ります。
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今後とも、国土交通行政にご理解ご協力を賜ります様、よろしくお願い申し上げます。
随分具体的な数字でもって説得されてしまいましたorz
今は国会期間中で忙しいと思うので、道路課は諦めようと思いますが、どうにかしてほしいです。
進展がありましたらまた報告します('ω')ノ
【追記】署名活動をはじめました→精神障害者にも公共交通費の割引を!
高速道路の精神障害者割引について、国土交通省より返答がありましたのでご報告します。
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有料道路における障害者割引制度は、障害者の方の社会的自立を支援するために、全国の高速道路会社等が申合せの上で行っているものです。
国土交通省としましては、当制度に関する要望があれば、高速道路会社等に制度の趣旨や利用実態等を踏まえた検討を求めており、御意見を頂戴した精神障害者に対する料金割引についても、高速道路会社等に対して、理解と協力を求めてきたところです。
今後とも、引き続き、高速道路会社等に対し検討を求めてまいります。
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こ・・・これだけ?
東京から実家のある栃木県に引っ越して、早1年たとうとしています。これまで障害者割引すら無かった地元のバス。車が無いと生きていけないような田舎ですが、一昨年から精神疾患の薬を飲んでいる人は、自動車免許更新時に公安に自己申告しないといけない(事故発生時の罰金が30万円)という法律ができたため、バスが欠かせない方もおられるのではないでしょうか?(栃木県の障害者手帳ではタクシーの割引も東京より手薄...)
最近ようやく割引制度ができてきたようなので、中身を確認するとびっくり仰天!なんとここでも精神障害者は差別されていたのです。
関東バスとは、関東自動車が運航している栃木県の主要なバスです。こちらに精神障害者だけが割引対象ではない理由を問い合わせました。すると1回目はこのような返信が返ってきました。
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毎度、関東バスをご利用頂きありがとうございます。
関東自動車株式会社 路線バス部です。
お問合せの内容につき、回答させて頂きます。
現在、弊社では精神障がい者割引の予定はございません。
路線バス事業を取り巻く環境は厳しく、割引の拡大を事業者単独で実施することが難
しい状況です。
なにとぞご理解くださいますようお願いいたします。
今後とも関東バスを宜しくお願い致します。
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もちろん納得がいかなかったので次のような質問にかえてもう一度問い合わせました。
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Q
うーん。ここでJRを出してきちゃうのか...別に西武バスを真似したっていいのに...こんな中途半端な政策するなら身体と知的の障害者割引も撤廃してほしいです。
今後これらの公共交通機関における料金割引の心情は、政治に訴えていく活動にシフトしていこうと思います。まずは支援していただける政党を見つけていきたいと思います。
西日本の一部鉄道グループ、航空会社にて、精神障害にも運賃割引が適応されるようになりました。以下、社団法人みんなねっとさんの記事のリンクになります。
https://seishinhoken.jp/informations/c1b86f4dfbc4b3f3b958d092ea51869cba595f08
https://seishinhoken.jp/informations/e001a92418c2ad56eda5a2d938035bb1d180e693
また、他の鉄道会社さんの運賃割引についても順次改善が行われており、有無の一覧がみんなねっとさんのホームページに掲載されています。
西武鉄道さんは、東武鉄道さんと同様に私のほうからも運賃体系の見直しや、優先席へのヘルプマーク掲示をお願いしていたのですが、2018年夏に確認したところ、ヘルプマークの掲示が行われていました。感謝申し上げます。
この件に関しましても、みんなねっとさんのサイト内で詳しく報告されているのでリンクを掲載いたします。
https://seishinhoken.jp/proposals/8c78aecffa7b625f9dcc35d4fbac7942f2996770
しかし、まだ高速道路などの運賃見直しは行われていません。
2020年のオリンピックに向けて、全ての障害者が平等の権利を得られるように、これからも活動を続けていきましょう!