双極性障害の症状が一段落したら、老後に備えて日々の暮らしを見直してみましょう。
このページでは、働けている人、働けていない人それぞれの場合で、どのような福祉サービスの選択肢があるのか、貯蓄はどのように行えばいいのかについて考えてみます。
ひとまず、関連する書籍をご紹介します。
企業でバリバリ働いている人々と違って、私たち障害者は支給される福祉金でギリギリの生活をしています。それでもやっぱり人間だもの、多少は趣味も持ちたい...なかなか家計簿がつけられない...障害手当が老齢手当に変わった瞬間に自己負担は増えるの?...などなどいろいろな悩みや疑問があるかと思います。
上記でご紹介した4冊は、障害者本人だけでなく、ご家族にも閲覧していただき、障害者の将来の生活についてよく話し合ってみていただくのに、つぐもがおススメの本です。お金のことだけでなく、住居のことも含めて、老後の準備を意識しましょう。
●障害福祉サービスの仕組み●
障害者総合支援法は、障害者の自立を支援する制度として、自立支援給付と地域生活支援事業を設けています。沢山項目がありますが、私たち精神障害者に特に関係するものについてピックアップしてみましょう。
その前に「障害支援区分」の認定を受けておくことをお勧めします。これは障害者手帳の等級とは別のもので、障害の多様な特性や心身の状態に応じて必要とされる標準的な支援の度合いを総合的に示す基準のことで、障害福祉サービスを受けるにあたって必要になる場合があります。区分は程度に応じて1~6段階+非該当の7区分があります。まずは役所や社会福祉協議会に相談してみましょう。尚、障害福祉サービス以外でかかる医療費や食事療法費の自己負担は医療型個別減免という制度により軽減される場合があります。また、障害者福祉サービス費用が高額になった場合には、高額障害福祉サービス等給付費、補足給付費が支払われる場合があります。
●自立支援給付●
自立支援給付の中心となるのは介護給付と訓練等給付ですが、双極性障害患者にとっては自立支援医療(精神)による医療費の減額または無償化も大きな給付です。
★介護給付とは、居宅介護、行動援護、短期入所、生活介護など、障害者の日常生活において必要になる介護サービスです。
★訓練等給付とは、自立訓練、就労移行支援、就労継続支援、就労定着支援、共同生活援助(グループホーム)、自立生活援助、住居サポート事業など、障害者の特徴に合わせて、社会の一員として生活することができる能力が身につくように、または生活能力を向上させることができるように、さまざまな訓練をするサービスです。
★自立支援医療とは、障害者が心身の障害の除去または軽減のために受けた医療費について、公費により自己負担額を軽くする(非課税世帯の場合は無料)制度です。詳しくは、本サイト内の~発症直後編~のpdf内をご覧ください。
●地域生活支援事業●
地域生活支援事業とは、地域に居住する障害者が、個人として尊重された日常生活・社会生活を営むことができるように地域の特性や利用者の状況に応じ、柔軟な形態によって行われる事業のことをいいます。主に市町村によって行われ、それぞれ必須事業と任意事業とに分類されています。
<その他の便利な福祉制度>
生活福祉金貸付制度
低所得者世帯、障害者などに必要な資金を貸し付ける制度です。申し込みは民生委員、社会福祉協議会。緊急小口資金の貸し付けは無利子です。
日常生活自立支援事業(旧・地域福祉権利擁護事業)
社会福祉協議会が行う福祉サービスです。低額な料金で、お金の管理、公共料金等の支払、貯金通帳や年金証書の預かり等を行ってくれます。
生活困窮者自立支援制度
生活困窮者自立支援制度は、生活に困った人を、生活保護の手前で支える制度です。市町によって支援内容が異なりますが、①住宅確保②就労支援③家計相談④子供の学習支援等となっています。
就労パスポート
2019年、厚生労働省は「就労パスポート」の作成を行いました。就労パスポートは、障害のある方が、働く上での自分の特徴やアピールポイント、希望する配慮などについて、支援機関と一緒に整理し、事業主などにわかりやすく伝えるためのツールです。
●最後に●
障害者総合支援法を見直し、障害を持つ青年がとることのできる介護(看護)・就労・住居のことをまとめてみました。
就労に関しては、上記の選択にとどまりません。働き方が多様になってきている今日、企業への一般就労が働き方の全てではありません。フリマアプリによる手芸品や古着の販売、クラウドワークスやランサーズなどを利用した在宅ワークなど、様々な収入方法があります。現在、そして将来のお金のことで心配なことがあれば、社労士やPSWなどの資格を持つフィナンシャルプランナーを利用して、お金の計画を立ててみるのも一つの方法です。さまざまな世の中のサービスを利用して、沢山の人たちとつながり、生活の設計を見直して、豊かで安心な生活を手に入れましょう。
双極性障害当事者で、節約・貯金・運用をこなしながら、障害クローズドで働いている@pooh_mickeyさんの普段のお金のやくりの工夫についてメモを寄稿していただきました。サブメニューバーの「患者・周囲の体験記」よりぜひご覧ください。
尚、障害者手帳による優遇措置については、本サイト内~発症直後編~をご覧ください。
●相続税と障害者控除について●
老齢になると、まず親が亡くなって、固定資産などの遺産を相続する方も多いでしょう。
相続人の中に、障害者がいる場合には、相続税から一定の控除が受けられるという特例があり、これを相続税の障害者控除と言います。
この相続税の障害者控除を受けるためには相続税法で定められた4つの要件を満たす必要があります。
①財産を受け取るときに日本国内に住所があること。
②受取人が税法における「一般障害者」または「特別障害者」であること。
③障害者控除を受ける人が「法定相続人」であること。
④障害者である相続人が相続財産を取得すること。相続財産を取得しなければ、その者には相続税は発生せず、そのため障害者控除も使うことはできません。ただし、障害者である相続人の相続税で控除しきれなかった分の障害者控除額は他の相続人の相続税額から控除することが可能です。
控除額は1年あたり10万円(一般障害者)か20万円(特別障害者)のどちらかになります。尚、固定資産税の障害者控除はありません(低所得者控除のみ)。具体的な手続き方法は、税務署へお問い合わせください。
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/03_2.ht
●個人型確定拠出年金(iDeCo)を利用した老後への貯蓄●
発病するまで企業型確定拠出年金(401K)に加入していた場合は、退職と同時に個人型確定拠出年金(iDeCo)に切り替える手続きが必要です。はじめから確定拠出年金に加入していなかった方は、個人でiDeCoに加入し、自分で自分用の退職金を貯蓄することができます。iDeCoは毎月一定額を積み立てながら、その資産を投資・運用して自分の老後の年金として貯蓄していくシステムです。障害年金を受給し、年金納付の法定免除を受けている方でも加入することができます。月5000円から1000円単位で積み立て運用が可能です。デメリットは60歳まで貯金を引き出すことができない点です。裏を返せば、お金を浪費してしまいがちな方には向いているかもしれません。iDeCoに関する詳しいことは、公式サイトhttps://www.ideco-koushiki.jp/をご覧ください。
●介護(看護)サービスの変化●
老後に関してまず最も気を付けなければならないのは、障害福祉サービスを利用する障害者が65歳(1号被保険者)に到達すると、2つのサービスを同時に受給する権利は残りますが、共通するサービスについては原則介護保険が優先されてしまうという点です。すなわち、それまで無料で受けていたサポートが1割負担になってしまいます。これに対して、低所得者および生活保護を受給する世帯の方は、負担額を償還してもらうことができますが、いくつかの条件を全て満たしておかなければなりません。その中には、介護保険2号保険者の間に介護サービスを受給していないことや、65歳に達する前日までに障害支援区分が2以上であることなどが含まれます。
●年金受給の変化●
基本的に公的年金は、支給事由が異なる2つ以上の年金はいずれか1つを選択することになります。すなわち、これまで障害年金を受給していた方が、老齢年金を受給できる年齢に達した時にはどちらかを選択しなければならないのです。(ちなみに青年期に、障害が理由で年金納付の法定免除を受けていた方は、老齢年金は満額貰えます。しかし厚生3級の障害年金の受給などで、所得の低さを理由に納付免除を受けていた方の老齢年金は半額になります。)
ただし、障害がある方には、老齢年金に障害者特別制度という特例加算がつくことがあります。これは年金制度における障害者等級1~3級に該当し、かつ厚生年金被保険者でない方が、老齢厚生年金のうち報酬比例部分を受け取れるようになった時点で、老齢年金に障害者のための加算が付くというものです。障害年金は非課税なのに対し、老齢年金が雑所得として課税対象であることや、厚生年金加入期間によって受給額に個人差があることなどから、どの年金受給を選択するべきか、周囲の家族や年金事務所などで相談してみるとよいでしょう。
●最後に●
上述の通り、老後に必要な貯蓄は、障害者ご本人さまの持つ固定資産や勤務年数、世帯内の人数によって変わってきます。また、障害年金を受給できるはずだったのに、受給しないまま老齢年金を受給されている方は、障害年金の遡及請求が可能であるかを、日本年金機構や社労士に尋ねてみるのも一つの手です。余裕があればフィナンシャルプランナーや税理士などとも相談し、どのような選択が一番良いか家族と話し合ってみてください。
親亡きあとについては、NPO法人コンボのサイト内にもコラムがありますのでご参照ください。https://www.comhbo.net/?page_id=468
本ページの記事作成にあたっては、polcaによる金銭的な援助やボランティアによる記事寄稿などのご支援をいただきました。ここにて関係者の皆様に御礼申し上げます。
polca援助:_Taro様、barbatos0508様
iDeCo情報:福祉分野専門フィナンシャルプランナー 鈴木裕二様
節約・貯蓄術の記事:Twitterアカウント(@pooh_mickey0515) pooh_mickey様